オトシゴのネクタイピン(ネクタイバー)

定番のオトシゴモチーフでネクタイバーを、という特別なご注文を頂きました。

ネクタイピンには針で記事に差し込むタイプ、ヘアピンもしくはマネークリップのように生地を金具に滑り込ませるタイプのもの、バネで生地を挟むタイプのもの、とあります。

やはりバネで挟むタイプが生地を痛めにくく、しっかりとしたバネを使用すれば落としてなくしてしまう可能性も低くなるのでベストかと思います。

ですが市販で金具としてできたものをみると、見た目に美しくなかったり作りが納得いかないものばかりで、これを使って商品を作るのは良いものを作りたいという私の信念にそぐわずどうしたものかと長年頭を悩ませておりました。

今回お客様にご注文を頂いたことを機会に、「機能はしているが何だか惜しい、何だかイマイチ」なネクタイバーを入手して分解し、構造の理解を深め、紙と鉛筆でじっくり改良策を考えてみました。

そうして生まれたのが以下で紹介するネクタイバー。

時間と労力を費やせば一見難しそうなこともなし得る、ということを確信した素晴らしい経験となりました。

バネはバネ用の線、バネの軸のみ18Kピンクゴールド(イエローよりもピンクの方が銅の量が多く硬さが増す)、他全てスターリングシルバー で作っています。

デザインの上でのこだわり:

ネクタイの幅たっぷりを堂々と横断するある程度の存在感があるものを。

後々お手入れのしがいがある鏡面磨きのシルバーの美しさを強調した一枚使用のシンプルなものを。

お客様ご希望のオトシゴモチーフは真ん中にすることでさらに堂々としたクラシックなデザインに。

制作の様子も以下いくつかの画像で紹介します。↓

まずは表部分の制作。

ネクタイピン専用サイズのオトシゴ型を真鍮板を切り抜いて作成しました。
一枚から切り抜くことでより丈夫に。溶接がないので最後の鏡面仕上げも美しく。

パーツの展開型を真鍮で作成し、銀板に貼り付け。
折り曲げやすいように切り込みを入れます

思った角度に曲げ、望む高さに固定する用の枕作ってかまして、鉄線で縛り溶接。
バネを内蔵するパーツの基本的なカーブフォルムを銀板を曲げて生成。

そのパーツを囲みこむボックスパーツも作成。

ボックスパーツと軸を溶接。
この時点でかなりワクワク度が増してきます。
バネのテスト。

ギザギザ、だとネクタイ記事に傷がいき過ぎそうなのでナミナミに。

というわけで、なんとも楽しい心踊る大冒険となりました。

このような素晴らしい機会を下さったO様に感謝の気持ちでいっぱいです。

本当にありがとうございました!